「住宅の品質確保の促進等に関する法律」(品確法)とは? 

この新法についての、建設関連団体・業者等の一般消費者に対する説明は、イメージ的なものが多いようですので、若干の説明をさせていただきます。

1.「住宅の品質確保の促進等に関する法律」制定の趣旨 

「建築基準法」があるにも係わらず、別に新たなかつ解りにくい法律を定めた理由は、「建築基準法」が規制法であり強制法であるのに対して、「住宅の品質確保の促進等に関する法律」がいわば表示法であり任意法の性格を持っているということ。「建築基準法」は今後規制緩和の方向で改正されていくのに対して、「住宅の品質確保の促進等に関する法律」は住宅の品質を測るための一つの物差しを示していて10年の瑕疵担保期間の義務づけ(瑕疵担保責任の特例制度)以外は、住宅の住まい手側の希望によって、あくまで任意に利用されるべき性格のものであるということです。

2.10年の瑕疵担保期間の義務づけ(瑕疵担保責任の特例制度)の意味

昨今契約上の瑕疵担保期間を1〜2年程度に短縮する事が常識化してしまいましたが、かつて地域の棟梁が10年あるいはそれ以上の期間に亘って建物の面倒をみることは当然のことでありました。構造躯体等基本的な部分の10年の瑕疵担保期間の義務づけ(瑕疵担保責任の特例制度)は、今まできちんとした仕事をしてきた工務店にとっては、何も新しいことではありません。

住宅品質確保促進法には、住宅性能表示制度の他に、もう一つの柱として、新築住宅の基本構造部分(構造耐力上主要な部分又は雨水の浸入を防止する部分)に関する瑕疵担保責任の特例制度が定められています。 この特例制度によって、全ての新築住宅の基本構造部分に、完成引渡後、10年以内に瑕疵(契約した内容と工事の内容が異なることなどを指します)があることがわかった場合、請負人または売主に対して、注文者または買主から、 修補などの請求をすることができます。

また、法律に基づく制度ではありませんが、売主または請負人が基本構造部分に係る瑕疵の発生に対応して修補を行う場合に、当該修補費用の全部又は一部を保険金によって賄うとともに、万が一売主または請負人が倒産して債務の履行が困難となった場合でも、買主または注文主に保険金が支払われる制度(瑕疵保証保険制度)があります。 この制度を活用することにより、売主または請負人による対応や売主等が倒産した場合の修補などの実施が円滑なものとなるため、有効な制度であるといえます。

なお、瑕疵担保責任の特例制度や瑕疵保証保険制度はあくまでも基本構造部分について生じた構造耐力や雨水の浸入に影響のある瑕疵を対象とするものであり、住宅性能表示制度によって評価された住宅性能が維持されることなどを10年間保証するものではないことに注意する必要があります。

3.住宅の価値は住宅性能表示制度だけでは示すことができない

住宅性能表示制度では、大きくは以下の9項目について表示されます。

   1.構造の安定に関すること

   2.火災時の安全に関すること

   3.劣化の軽減に関すること

   4.維持管理への配慮に関すること

   5.温熱環境に関すること

   6.空気環境に関すること

   7.光・視環境に関すること

   8.音環境に関すること

   9.高齢者等への配慮に関すること

しかし、住宅の価値を定めるものは、これら住宅性能表示制度で表示される性能項目だけではありません。例えば、意匠性、地域性や伝統工法・伝統的な素材、建物の味わい・風格、使い勝手の良さ等の価値もあるはずですが、これらのものは表示されません。

住宅にどういう価値を求めるかは、最終的には施主・住まい手の側が判断しなければなりません。住宅性能表示制度はその判断材料のいくつかを提供してくれることは確かでしょう。この制度を利用するためにはそのための手続費用も必要ですしその負担は施主がしなければなりません。

4.「住宅の品質確保の促進等に関する法律」はいつから適用されるのか

10年の瑕疵担保期間の義務づけは2000年4月1日以降の新築の工事契約物件から適用されています。集合住宅については未入居新築物件の売買契約日が2000年4月1日以降のものが有効になります。また、契約書内に住宅性能表示制度の適用がうたわれていれば、2000年10月施行の住宅性能表示制度についても4月1日以降の契約物件から同様に有効となります。

5. 住宅性能保証制度とは

「住宅性能保証制度」という言葉が、あたかも「住宅性能表示制度」や「住宅の品質確保の促進等に関する法律」と同義と誤解されていたり、混同されている傾向がありますので若干の説明をさせていただきます。

「住宅性能保証制度」は(財)住宅保証機構が行う瑕疵保証保険制度のことで、「住宅性能表示制度」や「住宅の品質確保の促進等に関する法律」とは別個のものです。但し、瑕疵保証保険の物件登録が「住宅性能表示制度」と連動していることから誤解や混同を招いている様ですが、最終的には施主の選択にゆだねられるべきもの(保険料は結果的に施主が負担)です。

「住宅性能保証制度」における瑕疵保証保険は、10年間の保証をうたっていますが、実際に保険金等が支払われるのは、保証開始日から3年目以降で、保険金等の額は保証の対象となる事故の補修費用から免責金額(一戸建て住宅の場合10万円)を除いた額の80%です。

6.住宅完成保証制度について

住宅の完成保証制度は民間レベルではいくつかの組織が各様に行っていますが、いずれも一定の保証限度額が設定されており、いざという場合に施主の更なる費用負担無しに、「完成保証制度」という言葉が与えるイメージ通りに「完成」が保証されるとはかぎりません。

また、(財)住宅保証機構においても、2000年2月から「住宅完成保証制度」を始めました。これも、契約条件によって異なりますが、工事請負金額に対する保証割合は20%〜70%となっていますので、通常施主の支払い済み金額に対して現場出来高が工事請負金額の50%を超えることは滅多に無いでしょうから、いざという場合施主の費用負担は最悪でも30%程度に収まると思われます。

さらに、「住宅完成保証制度」には一部、住宅金融公庫が2000年度第一回融資申し込み分より実施する中間資金の早期交付制度の利用が可能なものがあります。公庫の中間資金は、従来公庫融資に係わる現場審査完了後(屋根工事完了後)に交付されますが、早期交付制度では基礎(配筋)工事の確認後という通常より早い段階に交付されます。これは工務店にとっては資金調達コストの低減化を図る意味で有利ではありますが、融資申込人(発注者・施主)にとっては、利子負担増と住宅金融公庫への担保差し入れ手続き等の煩雑な事務手続きを伴います。

 

(参考資料1)  住宅の品質確保の促進等に関する法律によって変わること

1.10年の瑕疵担保期間の義務づけ(瑕疵担保責任の特例制度)

 ・10年間の瑕疵担保責任の対象となる部分

  (1) 構造躯体の部分(構造耐力上必要な部分)

基礎、基礎杭、壁、柱、小屋組、土台、筋交い等の斜材、床版、屋根版、梁・桁等の横架材で、住宅の荷重や地震動などによる外力に耐える部分

  (2) 雨水の浸入を防止する部分

屋根、外壁等の雨水にさらされる部分(具体的な対象部分は政令で定める)

  (3) その他

住宅の地盤は、基本構造部分には含まれないが、例えば地盤の状況を配慮しない基礎を設計、施工したために不同沈下が生じたような場合には、基礎の瑕疵となる。

 ・新築住宅の取得契約(請負・売買)において、基本構造部分以外も含めた瑕疵担保責任の20年までの伸長も可能にする。(任意)

(用語解説)

・瑕疵(かし):目的物が契約に定められた内容や社会通念上必要とされる性能を欠いていること。

・瑕疵担保責任:目的物に瑕疵があった場合に、その瑕疵を修理したり、賠償金の支払いなどをしなければならない責任のこと。

2.住宅性能表示制度・住宅に係わる紛争処理体制(指定住宅紛争処理機関への申請)は任意

 ・住宅性能表示制度

(1) 日本住宅性能表示基準等の適用

日本住宅性能表示基準に紛らわしい名称を用いることは禁止される。

(2) 指定住宅性能評価機関等への申請

性能評価を受けた住宅には住宅性能評価書が交付される。

 ・住宅に係わる紛争処理体制(指定住宅紛争処理機関への申請)

指定住宅紛争処理機関は、建設された住宅についての住宅性能評価書が交付されている場合に、その住宅に関する紛争のあっせん、調停、仲裁を行う。

指定住宅紛争処理機関は、住宅性能評価書に記載された事項に関する瑕疵の存否のみならず、当該住宅に関する当事者間の全ての紛争について取り扱う。

※住宅性能表示制度で住宅性能評価書が交付された物件のみを扱う。住宅性能評価を受けていない住宅を含めた相談業務は住宅紛争処理支援センター(建設大臣指定)が行う。

※指定住宅紛争処理機関は単位弁護士会等を建設大臣が指定する。指定住宅紛争処理機関へ申請した紛争は裁判所へ訴えることができない。

 

 (参考資料2) 省エネ法に基づく省エネルギー基準について

「省エネ法」の規定に基づき大臣が定める住宅の「省エネルギー基準」は、二つの基準から構成されます。

ひとつは、通商産業大臣と建設大臣が定める「建築主の判断の基準」であり、もうひとつは、建設大臣が定める「設計及び施工の指針」です。

「建築主の判断の基準」は、いわば「性能型」の基準の体裁をとっており、住宅の暖冷房エネルギー消費量の指標である「年間暖冷房負荷」、住宅の断熱性の指標である「熱損失係数」、気密性の指標である「相当隙間面積」、夏期の日射の程度を示す「日射取得係数」などを用いて住宅の省エネルギー措置の水準を示すものとなっています。全国を大きく6つの地域に区分して、それぞれの地域ごとに気候特性を踏まえた水準が定められています。

これに対して、「設計及び施工の指針」は、いわば「仕様型」の基準となっており、具体的に断熱構造とすべき住宅の部位を列記するほか、各部位ごとに用いる断熱材や断熱サッシ、断熱ガラスなどの仕様、気密性の向上や日射の遮蔽に関する施工上の留意点などを定めています。なお、同指針によった住宅であれば、「建築主の判断の基準」の定める水準におおむね適合できるよう、6つの地域の区分ごとに内容の整合をとりつつ策定されています。

本事項の評価方法基準では、「建築主の判断の基準」と「設計及び施工の指針」を引用しつつ、「熱損失係数」「相当隙間面積」「日射取得係数」による評価方法と、「仕様」との適否による評価方法の両方を定め、いずれによっても評価できることとしています。等級は4段階に設定されていますが、新旧の「省エネルギー基準」と各等級との対応関係は下記の「建築主の判断の基準」に記述したとおりです。

なお、「年間冷暖房負荷」の計算方法については、当面、その方法についての妥当性を含めて判断することが必要であると考えられることから、建設大臣による特別評価方法認定を受けることにより、適用を可能とすることとしています。

※ 現在のところ、この特別評価方法認定や特に等級4の評価を得るためには、その証明のために最低1年間にわたる実証実験結果等の膨大な資料提出等、かなり資本力のあるハウスメーカー等でないと対応が困難な状況です。

 

「建築主の判断の基準」

「省エネ法」の規定に基づき大臣が定める住宅の「省エネルギー基準」のひとつに「建築主の判断の基準」があり、これは、全国を大きく6つの地域に区分し、それぞれの地域ごとに気候特性を踏まえた住宅の省エネルギー措置に関する基準を定めるものです。昭和55年に制定、平成4 年および平成11年に改正・強化され、現在に至っています。

ここでは、平成11年に制定された基準(通称「次世代省エネルギー基準」)に適合する程度のエネルギー削減が得られる対策を講じた住宅について等級4を、平成4年に制定された基準(通称「新省エネルギー基準」)に適合する程度のエネルギー削減を得られる対策を講じた住宅について等級3を、昭和55年に制定された基準(通称「旧省エネルギー基準」)に適合する程度のエネルギー削減を得られる対策を講じた住宅について等級2を、それぞれ適用させて判断するものです。

地域ごとにばらつきはありますが、等級4と等級3 との間のエネルギー削減量は13 %〜48 %、等級3と等級2 との間のエネルギー削減量は29 %〜58%程度と見込まれています。

 

  (参考資料3) ホルムアルデヒドの室内濃度指針値などについて

平成9 年6月、厚生省から、ホルムアルデヒドの室内濃度指針値 (30分平均値で0.1mg/m3)が公表されました。この指針値は、一般的な人の明らかな刺激感覚を防ぐ濃度として、あくまでも望ましい室内環境の水準を示したものであり、強制を伴うものではありません。

住宅室内の空気に微量が含まれる化学物質の濃度は、温度、湿度、気流、住宅の気密性、建材などの使用量や養生期間、外気の影響、室内に持ち込まれる家具などの影響などの多様な要因により容易に変動する上、JASやJISにおいてホルムアルデヒドの放散量に関する等級が定められていない建材などもあるため、ホルムアルデヒド対策等級の評価結果のみをもって、この指針値との関係を判断することは困難であることにご注意ください。

また、平成10 年4月、学識経験者、関係省庁(建設省、通商産業省、厚生省、林野庁)、関連団体などからなる「健康住宅研究会」(委員長;今泉勝吉工学院大学名誉教授)では、住宅室内の化学物質による人の健康への影響を低減するための方策の検討成果を、「設計・施工ガイドライン」および「ユーザーズマニュアル」としてとりまとめました。

「設計・施工ガイドライン」(設計者・施工者向け) 「ユーザーズマニュアル」(一般向け)においては、住宅室内の化学物質対策のポイントとして、次を提示していますので、参考としてください。

イ 化学物質の放散が少ない建材等を適切に選択すること

(例)・JIS 、JASの等級を参考に、ホルムアルデヒド等の放散の少ない建材を選択する。

・ホルムアルデヒド等を放散する建材の使用量を低減させる。

ロ 化学物質を放散する接着剤等を適切に施工すること

(例)・ホルムアルデヒド等を放散する接着剤等は必要量のみ使用する。

・接着剤の乾燥に必要な養生期間を十分にとる。

ハ 換気・通風への配慮を十分に行うこと

(例)・効率的な換気・通風ができるような間取りや窓配置を工夫する。

 ・窓開けや換気扇により適切な換気量を確保する。

また、新築住宅の場合、できれば、接着剤が乾燥し、ある程度化学物質の放散量が低下するまでの十分な養生期間をおいて、入居することも重要といわれています。

燻煙乾燥木材を使った産直木造住宅供給システム

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