文明とエネルギーと経済 についての基本的なこと

人間の文明は「火の発見」に始まりました。これはエネルギーの発見でもありました。また、物々交換が経済の始まりと言われています。

世界の四大文明は大河流域の肥沃な土地での栽培農業が始まりです。このころの社会活動を支えていたエネルギーは主に人力や家畜の力で、その素になるものは栽培農業で大量生産される穀物でした。このころの経済も穀物を価値の基準として成り立っていました。

我が国では江戸時代まで、エネルギーは同じく主に人力や家畜の力に頼っていました。江戸時代の経済も米が価値基準となって成立していました。

ところがそのころ西欧では「産業革命」と言われる、社会活動を支えるエネルギーが地下から掘り出された化石エネルギーに転換するという大変革が起きていました。この「産業革命」が近代科学技術文明の始まりでもあります。また、経済の価値基準も最初は石炭そして石油へと移っていきました。石油が経済の価値基準であることを示した典型例がいわゆる「オイルショック」という出来事でした。石油が経済の価値基準である時代は今日も続いています。

最近よく「IT革命」なることが言われ、文明の大転換期にあるとも言われています。しかし、過去の文明の転換はエネルギーの転換に他ならなかったわけですから、ITが革命の主人公にはなり得なくて、革命をもたらす主人公は化石エネルギーに取って代わる次世代のエネルギーであるはずです。現在の段階で次世代エネルギーとして一般に知られているものは風力発電、太陽光発電、等の自然エネルギーを利用したものでしょう。燃料電池や原子力を加える考え方もありますが、天然ガスや化石燃料を使う燃料電池や、地下から掘りだしたウラニウムを使う原子力は化石エネルギーの一種と見なすべきでしょう。

今後新たに作られるエネルギー発生装置は、どれも小規模なものになります。大規模な発電施設は一見効率的に思われていますが、送電や配電、そして動力への変換等の過程で大部分(きちんと計算されたデータを知らないのですが9割程度?)が使われない熱エネルギーとして失われてしまいますので、発電施設は電気が消費されるすぐ近くにある方が効率が良いのです。従って各地に散らばる風力発電装置・建物に取り付けた太陽光発電装置・地熱発電装置・波力発電装置・小規模水力発電装置・ゴミ焼却発電装置等をネットワーク化しITを駆使して全体効率が最大限に高まるシステムを構築することが新たなエネルギー革命の一つとなるはずです。このような小規模発電施設ネットワークを完成させるための様々な施策が政府のエネルギー政策であるべきでしょう。

このような次世代エネルギーに対応する将来の経済の価値基準はどういうことになるのでしょうか?

「産業革命」に始まる科学技術文明は大量生産・大量消費・大量廃棄という一方通行のシステムによって、地球規模の環境破壊をもたらしました。「次世代エネルギー革命」は少量生産・少量消費・廃棄物ゼロ・リサイクル等といった循環型システムの構築に繋がるものでしょう。「化石エネルギー」の時代は物の生産が中心的な産業でしたが、「次世代エネルギー」の時代は今日静脈産業と言われる廃棄物の処理・リサイクル等が中心的な産業となるでしょう。

このような物の循環システムもまた小規模なほどエネルギー消費が少なくITを駆使することで効率化がはかれるはずです。環境税を導入して、大量生産方式の動脈産業から循環型の静脈産業への転換を促し、地域に即応する静脈型産業の育成を中心とした循環型システムを構築していくことが政府の景気対策であり雇用政策でもあるべきでしょう。景気対策として、大規模建設を中心とした生産促進方向へ財政支出することは大きな間違いです。

そして、循環型社会の経済の価値基準が何か? おそらく「自然の恵み」というようなことになるのでしょうが、今は明確な答えがわかりません。また、ITを用いた売買は、外見としては物々交換の形態に類似しているように思えるのですが・・・。

(2001/09/08  松野 浩)

 

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